2023年4月号『ハルノヒ』に想う


 

通勤途中のカーオーディオから、あいみょんの未来への希望を込めた曲が流れてくる。長く寒かった冬が過ぎ、花々が咲き活気満ちる春がやってきた。

 

しかし、患者さんの表情はなんだか晴れない。慢性の消化器病で通院されている50代の男性。一人暮らしで簡単な料理しかできないため食材の宅配サービスを利用していたが、値上がりしてうどんで済ませることが多くなったと言う。体調を保てないのではないかと不安。80歳代のご夫婦、年金生活。光熱費を節約するため暖房はつけず昼間はたくさん着込んで夜はさっさと寝ていると。今から猛暑の夏を心配している。医療費の自己負担がこれ以上増えたらもう通えないかもと嘆く。患者さんの暮らしぶりから物価高や社会保障の後退による生活苦がわかる。

 

医療機関も例外ではない。病院では庶務課が経営改善のため経費節減を呼びかけているが、現実は厳しい。電気代は2022年12月、今年1月ともに昨年よりひと月あたり120~130万円(なんと65%)増え、一昨年と比較するとほぼ倍になっている。水道代は20万円下がったが、これはコロナの影響で患者減となったためとのこと。(トホホ) 病院給食も相次ぐ値上がりで材料費が高騰し、昨年同月比で1日あたり100円(12.9%)増加。国が定める患者一人あたりの「入院時食事療養費」は25年間据え置かれるなか質の確保のためのやりくりは非常に厳しい。

 

経済大国であるはずの日本で生活を支える賃金収入は今やOECD加盟35か国中22位と、隣の韓国(18位)にも抜かれ、ここ10年以上ほとんど増えていない。アベノミクスの唱えたトリクルダウンは妄言に終わり、日本は格差ばかりが広がる成長しない国になってしまった。(大手企業を中心に賃上げがされているが、これもいまさらの感を拭えない。)

『どんな未来がこちらを覗いてるかな~♪ もっともっと大切を増やしていこう~♪』

平凡だが幸福なくらしを願う思いがかなう社会であって欲しい。飾り気のない歌声に元気をもらっているうちに病院に着いた。

 

                                           高松市 蓮井宏樹