2022年7月号「南風」


 

 いよいよ夏本番、診療室の窓は換気のために開放されたままで、クーラーは最強パワーといったところ・・・室温29℃(苦笑)。連日続く猛暑も過去最長記録を更新した。ひとたび破られた記録の壁は、もはや壁ではなくなる。スポーツでよくある現象も気象の話になると怖い。「観測史上」の相次ぐ更新は、出生数から最近の円相場まで異常値になった世の中だ。

 

コロナ禍となり三度目の夏がやってきた。世界では、戦争と飢餓が起こり我々は報道に引っ張りまわされ、地球環境の悪化に不安を募らせ、物資は高騰し、地球規模で明らかに急変しているように思われる毎日だ。

 

夏の風(南風)には名前がいろいろあって「黒南風」は梅雨の初めに黒い雨雲を呼ぶ無風のこと。「白南風」とは、梅雨明けの時期に吹くとされている。長くじめじめした梅雨から解放されて、同じ南風が黒から白に変わる感覚はわからないでもない。今年、麦わら帽子を新しくした。海や山に駆け出したくなる。だが今年の夏はいったい、どうなっているのだろう。まさかの六月中に梅雨明けした地域が多い。雨雲が去ったら去ったで、記録的な猛暑に見舞われ、息つく間もなく今度は台風だという。

 

 夏風の一つに「青田風」がある。文字通り田んぼを吹き渡る風のことだが、台風となれば緑をそよがす柔らかな風ではない。田んぼの見回りで命を落とす方が毎年のようにいる。宮城県のお伊勢浜海水浴場では、じつに十二年ぶりの海開きが行われたという。津波で流失した砂浜と松林を再生したものの、コロナ禍の影響で開場を2年延期していたらしい。地元の人たちにとっては、待ちに待った白い砂浜と青い海との戯れだろう。涙はしょっぱい。海水が、復興を存分に感じるしょっぱさになるといい。震災、土砂災害、風水害、水の事故。コロナに、戦争に、暑さに風も加わって、油断できない夏がつづく。

 

 

                                         高松市 宮脇 守男